入院生活
翌朝自宅を発ち、新幹線からタクシーを乗り継ぎ、病院へ向かいました。
病室に入った父は、思ったより元気そう・・・
と書きたいのですが、そうではなく、大分くたびれていました。
以前会った時よりも大分老いが進んでいました。
身体も自由が利かないところも出ていました。
特に足は自力ではほとんど動かせず、看護師さんに足の向きや体勢を変えてもらうことが多かったです。
胸の辺りが苦しいと聞いていたので、これから少しずつ痛みが出てくるのか、
これから痛みと向き合うのは大変だな…と思いましたが、聞いてみると、
実際はそれほど痛みを感じることはなかったようで、
すい臓や内臓系のがんの末期だと、痛みと向き合わなければいけない方も多くいるので、
それだけがなにより幸いなことでした。
それからの3日間は、お昼と夜の食事の前後に病院へ行き、
入院生活に必要なものを揃えたり、父のリクエストに応えたり、
それ以外にも病室に行き、雑談をしたり、足をさすったりするような
日を過ごしていました。
僕が観ていた3日間では、少しずつ食欲も出てきているようにも見えました。
声は大分出なくなっていましたが、シャレを言うこともあったので、
まだ余裕はあるのかなといった様子。
ただ、今思うと、その時父はきっと自分がもう長くないことを悟っていたんだと思います。
「働きすぎるな」「休みをきちんととれ」とか、「休みの日には緑と触れ合え」とか、「母を大事にしろ」とか、
多少説教じみたことを話して、僕に何か残したいと思っていたんじゃないかと思います。
吹いたら飛んでしまうくらいの線の細さで話しかけるので、父の発した言葉のどの程度をつかめたのかはわかりません。
ただ、伝えたかった気持ちは受け取ったつもりです。
そして、3日の滞在の最後夕方に、妹と姪が遠くから病院まで駆けつけてくれました。
父は姪っ子にとても喜んでいました。
「僕が戻った時と喜び方が全く違う・・・。」
軽くショックを受けましたが、孫は無条件でかわいいから、しょうがないか。
「行ってくるからね。次来る時までしっかりしててね。」
と告げ、妹と姪にバトンタッチして実家を後にしました。